大城道則先生
兵庫県生まれ。関西大学大学院文学研究科史学専攻博士課程後期課程修了 博士(文学)、バーミンガム大学大学院 古代史・考古学学科 エジプト学専攻修了。主な著書に『ツタンカーメン 「悲劇の少年王」の知られざる実像』(中央公論新社刊)、『古代エジプト 死者からの声―ナイルに培われたその死生観―』(河出書房新社刊)、『図説ピラミッドの歴史』(河出書房新社刊)など。
萩原美里さん
文学部歴史学科4年。「分からないことが多い古代史を研究していて、イマジネーション力が鍛えられました!大城ゼミは発想が柔軟な人が多くておもしろいです」
秘明るく刺激にあふれた
学びの場
大城先生、萩原さん、今日はゼミについていろいろ教えていただければと思います。
よろしくお願いします!
まず、先生の専門を教えてください。
私個人では、古代のエジプト史の研究をしています。
ゼミの研究テーマは?
ゼミでは、エジプトも含む、古代オリエント史、またローマやギリシャなど、紀元前の古代西洋史すべてをカバーしています。
ゼミ生それぞれがやりたい地域を選ぶのでしょうか?
そうです。与えられるものをやるのは高校までと同じで、自分がやりたいことを見つけて学ばないと大学で学ぶ意味はないですから。
確かにそうですね。どうして萩原さんは大城ゼミを専攻されたのでしょうか?
小さい頃からテレビを観て、エジプトは「こんなにまだ分かっていないことがあるんだ!」と驚いて、大学に入る前から興味があったんです。
『世界ふしぎ発見!』とか。
そうです! それで大学進学のときに「好きなことを勉強しないと意味がない」と思っていて。大城先生のお名前は知っていたので、オープンキャンパスでお話をさせていただいて、ここならしっかり学べると思いました。
なるほど。オープンキャンパスはどういった内容なのでしょうか?
模擬授業です。高校生に大学の授業は実際どういうものなのかを一番みてもらいたいので、通常90分の授業を20分に短縮して。
イメージしやすくていいですね! ゼミは具体的にどういったことをしますか?
それぞれの研究テーマに即した文献や論文、資料の読解が基本です。
合宿や課外活動はありますか?
発表の進み具合によって11月にゼミ合宿に行きます。1泊2日で箱根や七沢、秩父によく行きますね。それ以外の合同行事は、前期と後期の最終日に懇親会のゼミコンをしたり。
あとは、うちのゼミ生は男女問わず仲がいいので、私がいなくても勝手に合宿したり、遊びに行ったりしていますね(笑)
どういった人が多いのでしょうか?
7割は女子で、明るくて真面目な人が多いと思います。みんな地域はバラバラでも古代史という研究テーマが近いので、議論をしていてもすごく刺激になりますね。
先生との距離が近いので
学びやすいです
萩原さんの研究テーマは古代エジプトのどの時代ですか?
古代エジプト史は3000年くらいあって、王朝が始まる前とか分断期とかいろいろあるのですが、私がテーマとして選んだのは、一番栄えていた新王国時代です。紀元前1570年頃から500年続いた時代。
ツタンカーメンなどで有名な。
そうです。そこで取り扱っているのが第18王朝の王、アクエンアテン。高校の世界史の授業では異端とされていましたが、研究していくうちに、特殊だった訳ではなく時代が影響を及ぼしてそういった人物像ができあがったことが分かっておもしろかったです。
より深く学べて発見があったんですね。
高校では表面的な印象だけでしたが、論文を読んでいくうちに、もっと別の視点で見ることが大事だったのが分かって「研究」という行為を実感しました。
それは豊かな学びですね!
研究する上で「固定観念を信じない」ということが大事ですから。
歴史は暗記ではない、と。
そう、すべてを疑う必要があるんです。これまでに研究されて蓄積されたものと新しい情報を、自分というフィルターを通して考え、疑い、答えを導き出す。それがゼミでの研究の醍醐味だと思いますし、その上で僕も知らないものを見つけてくれたら嬉しいですね。
実際にゼミ生が先生も気付かなかった新発見をすることもありますか?
ありますよ!これまで何人もいました。
それはすごいですね。
だから僕もゼミを楽しんでいます(笑)
大城先生のご指導は、やる気を起こしてくれるだけじゃなく、距離が近くて気軽に質問・相談に行ける関係なので、すごく学びやすいです。ゼミ生に寄り添ってくれて、研究以外の日常生活や社会に出た後のこともいろいろ教えてくれるので、このゼミはいろいろな面でためになります。
ゼミ生の好奇心を引き出し
探究心を育む
実際にゼミでエジプトに行かれたりは?
私の個人的な調査に学生を連れて行ったことはありますが、渡航費等が高額なのでゼミではまだないですね。でも、旅行社などから話は来ているので今後は前向きに検討しています。
先生は毎年行かれているんでしょうか?
昔は夏休みに2ヶ月くらい行っていましたが、今は忙しいので年に1回10日くらいですね。
先生が帰国された後にエジプトの話を生で聞くのも楽しみです。よく学外の講演会もやってらっしゃるので、話もすごくおもしろくて。
リアルタイムの情報が知れるのはいいですね。
いろんな人に古代エジプト史の魅力を知ってもらいたいんです。古代エジプト史は世界の歴史学の中でトップクラスにメジャーなのに、まだほとんど分かっていない。発掘現場もまだ手がついていないところが9割あったり、未知の世界だからこそ追いかけがいがあるんです。
お話していてすごく伝わってきます! ちなみにゼミ生の卒業後の進路はどういったところがありますか?
他のゼミに比べたら、教員と公務員になる学生が圧倒的に多いですね。あと、古代エジプト史が多いですが、大学院に進学する学生も。
それだけ追いかけたくなる学問なのですね。では、先生にとってゼミとはどういう場でしょうか?
「引き出す場」でしょうか。学生は一生懸命研究し、発表の用意をしてプレゼンをします。そこで彼ら彼女らが気付かないところがあるので、それをうまく提案して引き出してあげる。そして最終的に形として卒業論文を自分でつくり上げてもらうことを目指しています。
学生が主体的に研究するサポート役なんですね。
駒大のカリキュラム自体がそれを1年生の頃から考えられたものなんです。他の大学で3年生からやるゼミが1年生の頃からあって、テーマを決めて研究心が育まれるように意識付けをしていて。
学生の「学びたい」という好奇心の受け皿が早い段階であるんですね。では、萩原さんが思う大城ゼミの魅力とは?
先生はどんな好奇心を持っていっても、決して反対することなくすべてに賛成してくれて、尊重して伸ばしてくれようとしてくれます。そして、もし「違うな」と思ったら別の視点からのアプローチをその場で教えてくださるので、新しい気付きを得られますし、研究意欲が出てくるんです。
それは素晴らしいですね!
ゼミ生の皆いろいろな地域を研究していて、他の人の発表で自分が思いも寄らない発想がいくつもでてくるので、それも大城ゼミの魅力だと思います。
取材時期:2018年11月