NOZOKIMI LAB

多角的に労務を学び、プロ意識とサービス精神で人間力を育む

資料読解の座学だけでなく、主体性と労働の現場を体験することを大事にしている鹿嶋先生。
そこで育まれるものを、実際に学んでいるゼミ生を交えてうかがいました。

鹿嶋 秀晃 先生

宮崎県出身。九州大学経済学部経済学科卒業、同大学経済学研究科 経営学専攻博士後期課程単位取得退学。現在、駒澤大学経営学部経営学科教授。主な著書に『価値創発(EVP)時代の人的資源管理』(共著・ミネルヴァ書房刊)、『経営学を学ぼう』(共著・中央経済社刊)、『現代労働問題分析』(共著・法律文化社)など。

小田 逸輝さん

経営学部経営学科2年。「ゼミでの研究という一つの目標がある大学生活は、充実していて人間的な成長も感じられて楽しいです!」

学びの視野を広げてくれる
多角的な学び

インタビュアー
鹿嶋先生、小田さん、本日はよろしくお願いします! まず最初にゼミのテーマについて教えてください。
鹿嶋 秀晃 先生
よろしくお願いします。ゼミの専門領域は「経営労務論」という科目で、一般的には人事労務管理と言われていることです。
インタビュアー
ここ数年、話題になっているブラック企業問題や「ワークライフバランス」なども取り扱っているのでしょうか? 
鹿嶋 秀晃 先生
そういったものも含まれます。具体的なメインテーマは3つあって「雇用」「賃金」「労使関係」。それらを、「企業の中で働く労働者はいかにすれば能力を発揮できるか?」「労働者はどうすれば職業生活、家庭生活、地域生活、個人生活を充実させられるか?」という2つの視点で研究しています。
インタビュアー
社会に身近な問題ですね。
鹿嶋 秀晃 先生
そういったことを研究する上で、労働者と経営者の双方の視点を必ず入れるようにしています。
インタビュアー
それはどういった意図ですか?
鹿嶋 秀晃 先生
経営者だけの視点だとブラック企業になり、労働者だけの考え方だと会社が回らなくなる。なので、双方の妥協点をどう決めるかが大事なんです。
インタビュアー
なるほど。ゼミでは具体的にどういったことをしていますか?
鹿嶋 秀晃 先生
2年生は新書中心、3年生は単行本中心に輪読を行い、4年生は1年かけて自分の選んだテーマについて卒論を書くスタイルです。
鹿嶋 秀晃 先生
過去に扱った文献のリストや課外活動の内容、年間スケジュールなど公式のWEBで公開していますので、参考にしてください。 https://www.komazawa-u.ac.jp/~kashima/
インタビュアー
おおっ、これは分かりやすいですね!
鹿嶋 秀晃 先生
扱う文献は、経営学だけにとらわれず、経済学、社会学、心理学、法律学、教育学等のジャンルまで扱うことがあるのも特徴ですね。
インタビュアー
それはどういう目的でしょうか?
鹿嶋 秀晃 先生
経営は、会計や財務といったお金のことだけ考えればいいのではなく、社会や生活と密接に結びついているので、例えば労働社会学や産業心理学等も全部あわせて考えて、初めて職場の管理ができるんです。
インタビュアー
幅広い視点で分析しているんですね。小田さんはどうして鹿嶋ゼミを専攻されたのですか?
小田 逸輝さん
チェーン店のアルバイトで人を動かす役職になっていて、そこに通じるものがあったのと、真面目に研究できそうな環境だったからです。
鹿嶋 秀晃 先生
彼は凄く学びに積極的です。アルバイト先の葛藤をゼミの中で吐露することがあって、それが研究している労働問題に関わるから、いい議論の素材になっていますよ。
インタビュアー
それはリアルな問題ですね!
小田 逸輝さん
ゼミで皆と話していて、自分が思っている意見と角度の全く違う意見を聞くと「一つの意見に固執するのは良くない」と実感できます。鹿嶋ゼミに入って、さまざまなことの視野が広がりましたね。

主体性を育むことが
人間的な成長を促す!

インタビュアー
課外活動なども行っているのでしょうか?
鹿嶋 秀晃 先生
労働に関するさまざまなところに行っていますが、例えば労働裁判の傍聴に行ったりします。勉強したことを生でも観られるように。
インタビュアー
なかなかできない体験です。
鹿嶋 秀晃 先生
労働裁判自体が研究テーマに繋がるという目的がありますが、人が人を裁くのは会社の人事考課も同じ。「本の勉強だけでなく、日常のいろいろなところから学べるよ」というヒントを与えることを大事にしているんです。
インタビュアー
気付きに繋がるきっかけを大切にされているのですね。小田さんは傍聴されてどう感じましたか?
小田 逸輝さん
当事者どうしがずっと討論している緊張感がすごくて、リアルな現場を観ることができて勉強になりました。
鹿嶋 秀晃 先生
現場でいうと、実際に労働の現場を観に行く夏の工場見学もあります。昨年は、食肉加工場のある品川の駅前にある、肉の流通や人種差別の是正を展示している「お肉の情報館」に行きました。
インタビュアー
それはおもしろそうですね。見学する施設などは先生が決めるのでしょうか?
鹿嶋 秀晃 先生
いえ、うちは毎年ゼミ生に提案してもらってます。3年生が主体になって、分からないことがあると先輩に聞きながら。
インタビュアー
学生が主体となっている。
鹿嶋 秀晃 先生
そうすることで労務論に繋がる技能伝承を体で学べるんです。あらゆる活動をゼミ生自身に企画させて、そこでコミュニケーション力や自主性を付けて、人間的に成長して欲しいんです。
インタビュアー
社会に出ても通用するように?
鹿嶋 秀晃 先生
そう、なので「プロ意識」と「サービス精神」の2大スローガンを掲げています。
インタビュアー
プロ意識とは?
鹿嶋 秀晃 先生
卒論のときに言っているのですが、自分が専門家という意識でやることが大事なんです。どんな専門家も最初はゼロからスタートしているので、やればやるだけ高まり、誰から何を聞かれても「この分野なら絶対に答えられる」というくらいにがんばれば、必ず卒論のレベルがあがるので。
インタビュアー
確かにどんな偉人であっても最初はまっさらです。
小田 逸輝さん
そこから学べば学ぶほどおもしろくなってくるので、止まらなくなりますよ!

学びも遊びも
養分をチャージできるゼミ

インタビュアー
「サービス精神」とはどういったことですか?
鹿嶋 秀晃 先生
どうせやるんだったら楽しくやろう、という姿勢です。相手を楽しませれば、自分も楽しくなるし、それが相互にできると組織自体がおもしろくなってくるので、プラスアルファし続けることが大事なんです。
インタビュアー
たとえばどういったことでしょうか?
鹿嶋 秀晃 先生
レクリエーションで水族館に行ったのですが、Instagramを使って写真の投稿大会をしました。皆で写真を撮って、匿名で集めておもしろさを競う。そうすると単に見学するだけでなく、より楽しくなる。
インタビュアー
それは盛り上がりそうですね! 小田さんは他に印象に残っている活動はありますか?
小田 逸輝さん
夏に2泊3日で合宿に行くのですが、昨年は群馬で蕎麦打ちを体験したり、勉強だけでなく交流を深められたのが思い出に残っています。あと冬のスポーツ大会も。
インタビュアー
スポーツもするんですね!
鹿嶋 秀晃 先生
冬は地方で体育館を借りて体力が続くまでバレーやバスケ、ドッジボールをするんです。
小田 逸輝さん
体力的に大変でしたが(笑)、童心にかえれておもしろかったです。
インタビュアー
学びから遊びまで多彩で、ゼミ生同士の関係も深くなれそうですね。
小田 逸輝さん
仲がいいですよ。ゼミ以外でも食事にいったり。
鹿嶋 秀晃 先生
OBOGもほとんどの人がSNSで繋がっているので、たまに遊びにきたりします。うちは演習室ではなく私の研究室でゼミをやっているので、みんな懐かしがっています。
インタビュアー
部室のようなホームグラウンドになっているのですね。
小田 逸輝さん
少人数だと先生やゼミ生同士の距離が近いので、密接なコミュニケーションがとれるのがいいです。
インタビュアー
なるほど。では鹿嶋先生、どういった人がこのゼミに向いていると思いますか?
鹿嶋 秀晃 先生
型を決めずにどんどん提案してくれる人。前例の踏襲だけでなく、プラスサービス精神が旺盛であれば自分だけでなく、みんなが成長できるので。
インタビュアー
それは間違いないですね。
鹿嶋 秀晃 先生
以前4年生が言った言葉が印象に残っているのですが、就職活動が忙しくゼミにこれない時期に「私、いまゼミが足りてない」と言って、2年生のゼミに出席していて。いろんな面で学生たちの養分をチャージするような場になっていると思います。
小田 逸輝さん
僕は勉強面でそれを感じますね。大人数の講義は途中で集中力が途切れることもありますが、ゼミは皆同じ方向を向いた研究をしていて、少人数だからこそ議論ができたり「勉強しに来ている」という意欲が高まる。そういう意味では、ゼミでの学びは一番大学に来て意味があることだと思っています。

取材時期:2018年10月

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