NOZOKIMI LAB

少人数の完全自主性!社会で通用する力がつくゼミ

他大学に比べてレベルが高いと評されている駒大の心理学科。その中で教鞭をとる永田先生のゼミは、知覚認知心理学を通じて、社会人としての礎(いしずえ)を育んでいる——。

永田ゼミ

永田 陽子先生

日本女子大学文学部卒業、日本女子大学博士。駒澤大学文学部心理学科教授。知覚・認知機能に関する発達的研究や発達臨床に関する認知神経心理学的研究を行う。主な論文に『視覚認知課題に困難を示した11歳男児への療育の過程』(共著)、『大学生を対象とした有名人顔写真の選定:相貌失認に関する認知神経心理学的アプローチ1』(共著)等

古寺 正樹さん

文学部心理学科4年、永田ゼミ、ゼミ生。視覚誘導制自己誘導感覚を研究。「永田ゼミは自分のペースで学べるいい環境だと思います」

なぜ感動するか自分で考え
答えを導き出す

インタビュアー
永田先生、古寺さん、今日はゼミでどういったことを行っているか色々うかがえればと思います。よろしくお願いします。
永田 陽子先生
よろしくお願いします。
インタビュアー
まず先生のご専攻を教えてください。
永田 陽子先生
私の専門は認知心理学です。見るものをどのように認識しているか。人間が赤ちゃんの時から幼稚園、小学生と進んでいく中でどう認識が変化して大人になるのかを研究しています。
インタビュアー
ゼミはどういった内容なのでしょうか?
永田 陽子先生
心理学科のゼミは3年生からなのですが、テーマは「人間はアート作品になぜ感動するのか?」それを知覚、空間、身体を通して認知心理学的に考察しています。
インタビュアー
具体的にどういうことでしょうか?
永田 陽子先生
毎年、課外授業に行くのですが、今年は『teamLab Borderless』に行きました。
インタビュアー
いま話題のデジタルアートミュージアムですね。
永田 陽子先生
そこに行くと「きれい!」と感激する。それは見ることや身体を通してのことだったりするので、ただ体験するだけでなく、どうして感激するのかを認知心理学的に考察するんです。
インタビュアー
それは考えたこともなかったです。
永田 陽子先生
そういった感情は脳を通して情緒と結びついているのですが、脳はそれまで体験した事がない事を体験すると「すごい」となる。
インタビュアー
なるほど。そういったフィールドワークは、他にどういったところに行きますか?
永田 陽子先生
たとえば錯視や錯覚に興味がある学年だとディズニーランドに行ったり。
インタビュアー
テーマパークにも行くんですね!
永田 陽子先生
ディズニーランドは最初にアーケードがありますが、城に近づくにつれて実は道路の幅が狭くなっているんです。それは遠くに見えるようにして期待感を呼び起こすため。逆に帰りは出口が近く感じます。建物の高さも上にいくほど小さくしていって高く見せたり。
インタビュアー
色々な仕掛けがあるんですね。
永田 陽子先生
他にも、全身で体感するUSJのハリーポッターやハウステンボス等、課外活動は映像で感動するテーマパークに行くことが多いですね。
インタビュアー
行った後はレポートを書くのでしょうか。
永田 陽子先生
最初に課題を出してから行くので、3人ずつグループを作って、ゼミの中で発表してもらいます。
永田 陽子先生
ただ、明確な正解はないので、一番大事なのは「考える」という行為。今の世の中はすぐに答えが出てきて、自分で考える機会が少なくなってきているので「なぜそういう答えを導き出したのか」に重きを置いています。

社会で通用する
プレゼン力や分析力を養う!

インタビュアー
フィールドワーク以外の普段のゼミはどういった内容ですか?
永田 陽子先生
3年生は「見る」ことの知覚認知の実験を行います。
インタビュアー
たとえばどういう実験ですか?
永田 陽子先生
分かりやすいのは、テレビ番組等よくある、画像の一部が変化していくのを当てるクイズ。
インタビュアー
徐々に変わっていくのに気付かない現象ですね。
永田 陽子先生
そう。私は知覚認知心理学という100名の講義を持っていますが、その授業内でゼミ生がパワーポイントで資料を作って学生の前で実験を行い、そのデータ分析集計をゼミでして、さらに結果報告を100名の前でプレゼンしてもらってます。
インタビュアー
100人の前で実験して発表するのはすごいですね!
永田 陽子先生
それらを通して、分かりやすく伝える能力や分析力、プレゼン力といった社会に出ても役立つ能力を身につけてもらいたいんです。
インタビュアー
すごく実践的だと思います。古寺さんはどういった実験をしましたか?
古寺 正樹さん
「カクテルパーティー効果」の実験をしました。周りが騒がしくても目の前の人の話している言葉は聞き取れるという「選択的注意」という領域があって。3人一組で左右の人がそれぞれ決められた別の文を読んで、真ん中の人が聞く実験です。
インタビュアー
結果はどうでしたか?
古寺 正樹さん
すごく差が出ました。最後に何を言っていたか書いてもらうのですが、集中してした側の話は割と書けるのですが、していなかった側の方は単語が分かるぐらいで。
インタビュアー
それは面白いですね!
古寺 正樹さん
実際に結果が出るのが面白かったです! テキストで読むより体感できました。
インタビュアー
プレゼンはうまくいきましたか?
古寺 正樹さん
すごく緊張して……(笑)先生から台本を見るのは禁じられているので、本質を理解して自分の言葉で話さないといけない。自分で作ったスライドを見て心を落ち着かせながらなんとか乗り切りました。
インタビュアー
それはいい経験ですね。
古寺 正樹さん
そうですね。先日、OBの同窓会に出席したのですが「あのプレゼンの経験が就職試験の自己紹介とか、営業でのプレゼンに役立った」と言われていて、後々の人生の糧になるんだな、と思いました。

ゼミを通して培う
「自分で乗り越える力」

インタビュアー
ゼミ生はどういった方が多いですか?
古寺 正樹さん
マイペースな人が多いですね。
永田 陽子先生
うちのゼミは一人ひとりと向き合うために6〜8名の少人数制で、成績順で決められるので「一緒に入ろう」というのができないんです。
インタビュアー
難関なんですね。
永田 陽子先生
駒大の心理学科全体のレベルが高く、目的意識を持って進学してくる学生が多いです。中には、偏差値だけでいうと上のレベルの大学に合格しているのに駒大の心理学科にくる人もいます。
インタビュアー
それはすごい。ゼミ生同士の関係性はどうですか?
古寺 正樹さん
馴れ合いはないですが、協力していかないとできないので、ギブアンドテイクの良い関係だと思います。
永田 陽子先生
自分の作業を進めていくために相手の手助けをしたり意見を交換するのは、会社に入っても同じですから、そういうことを体で学んでいってもらってます。基本的には完全自主性でゼミ生各自に任せていますね。
古寺 正樹さん
強制ではなく自分でやると成長を感じますし、自然と前のめりに学びたくなります。
インタビュアー
その環境だと自立心が育まれますね。
永田 陽子先生
実験でも卒論でも私が押しつけるのではなく、自分が興味を持ったことをしないと意味がないので。研究を進めていって壁にぶち当たった時も、自分で解決して乗り越えていかないと成長しないので、私はヒントしか与えません。
インタビュアー
それはどんな仕事に就いても同じですね。
永田 陽子先生
仕事だけじゃなく、お母さんになっても同じ。自分で乗り越える力は社会生活で必ずいきてきますから。
インタビュアー
その力を養う場としてゼミがある、と。
永田 陽子先生
そうですね。私は社会に貢献できる人間を育てたくて、ゼミはそのベースを作る場所だと捉えています。ゼミで色々な体験を通じて、体で覚えていって、社会に出た時にそれが会社や人にとってプラスになればいいと思います。

取材時期:2018年11月

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