NOZOKIMI LAB

ロマンあふれる海外の発掘実習で冒険心が加速する!

日本における中国考古学の第一人者である角道先生。「考古学は知識がなくても好奇心さえあれば楽しく学べる!」というゼミの魅力をゼミ生を交えて聞きました。

角道ゼミ

角道 亮介先生

大阪府生まれ。東京大学人文社会系研究科基礎文化研究専攻博士課程単位取得満期退学。東京大学 博士(文学)。中国殷周時代の青銅器、中華世界の形成に関する考古学的研究が専門分野。主な著書に『西周王朝とその青銅器』(六一書房刊)、『地下からの贈り物』(共著・東方書店刊)、『中国文化史大辞典』(共著・大修館刊)など。

常田 晃平さん

文学部歴史学科3年。「このゼミはみんな個性豊かでおもしろい人が多いです。いつかイタリアの現地で発掘してみたいですね」

宮﨑 澪菜さん

文学部歴史学科3年。「考古学は現代社会に通じることも学べるので、研究を進めていくといろいろな面で視野が広くなるのを実感しています」

発掘物を通じて文化の形成を
読み解くおもしろさ

インタビュアー
角道先生、ゼミ生の皆さん、今日はゼミについておうかがいできればと思います。まず、先生の研究について教えてください。
角道 亮介先生
よろしくお願いします!私の専門は中国の考古学です。なかでも、紀元前1000年くらいの殷と周という王朝を中心に研究しています。
インタビュアー
ゼミも中国専門なのですか?
角道 亮介先生
いえ、ゼミは外国の考古学で、エジプト等の西アジアや中南米、ヨーロッパ等、それぞれゼミ生が選んだ地域を研究しています。
インタビュアー
ゼミはどういった内容なのでしょうか?
角道 亮介先生
歴史学科のゼミは3年生からなのですが、前期は考古学に関する論文を読んで理解を深め、毎週担当する人がまとめてきた発表について質問や批評をします。後期になると各自が卒論で扱いたいテーマの論文を探し、それをまとめて発表してもらいます。
インタビュアー
なるほど。課外実習などはありますか?
角道 亮介先生
毎年8月と10月に史跡等に行って発掘実習をします。今年は8月に関東圏でも重要な古代寺院である埼玉県坂戸市の勝呂廃寺(すぐろはいじ)に行きました。
インタビュアー
発掘というと、テレビの徳川埋蔵金のようなシャベルで穴を掘るイメージがあります。
角道 亮介先生
使うのは普通の園芸用のスコップですよ。私は学生時代から10年以上同じものを使ってます(笑)。奥まで穴を掘るのではなく、広い面を同じくらいの厚さで徐々に掘っていって土を見るんです。
インタビュアー
土で何がわかるのでしょうか?
角道 亮介先生
さまざまなことが読み取れるんです。たとえば古い時代のお寺ですと、回廊や仏塔、講堂などある程度決まった構造があるので、廃絶されて上部構造がなくなっていても土をみれば伽藍配置やおおよその年代がわかります。
インタビュアー
推理小説みたいでおもしろいですね!石器や土器が出てくることもあるのでしょうか?
角道 亮介先生
本当におもしろいですよ!出てくるものは瓦や土器が多いのですが、今年は勝呂廃寺から馬の歯の骨が出てきました。
インタビュアー
馬の骨!そこで飼われていたんでしょうか。
角道 亮介先生
古くからお寺が建てられるような重要な土地では、古くからのお祭りで動物を捧げ物にする風習があった可能性があります。それが、お寺が建つ時代になっても地域の伝統として一部に残っていたのかもしれません。
インタビュアー
それは興味深いですね。
角道 亮介先生
そういった発掘物を通して、当時そこでどういうことが行われてきたのか、暮らしや風習、文化を読み解くのが考古学の本質なんです。物は嘘つきませんから。真実が宿されているんです。
インタビュアー
なるほど。痕跡からイマジネーションを働かせるんですね。掘っていたら何が出てくるかドキドキしそうです。
常田 晃平さん
しますよ!今年、勝呂廃寺の発掘に参加したとき、掘っていたらカンッって音がして瓦が出たり、逆に石器と思って取りだしたらただの石だったりしてゲームのようでおもしろいです。

日本で唯一
海外発掘に参加できるゼミ

インタビュアー
10月の発掘実習はどういったところに行くのでしょうか?
角道 亮介先生
国外です。学部生で海外の発掘現場に参加できるのは、駒大の歴史学科考古学専攻だけだと思います。
インタビュアー
それはすごいですね!今年はどこに行きましたか?
角道 亮介先生
陝西省鳳翔県に行きました。紀元前500年頃、春秋戦国時代に秦という国があって、そこの城の遺跡です。毎年、北京大学の発掘に参加させていただく形で。
インタビュアー
人気コミック『キングダム』の時代ですね。どういったものが出てくるのでしょうか?
角道 亮介先生
たとえば秦の時代の代表的な「雲紋」という文様が描かれている瓦。瓦はもようが短期間で変わるので時代がすぐ分かるんです。それが立派なものだったら、そこに相当大きな宮殿があったと推測したり。
角道 亮介先生
他にも、似たような形の青銅器でも素材や重量の違いで時代性が分かったり、実物に触れることが考古学で一番大事なんです。
インタビュアー
写真だけでは分からないことが多い。
インタビュアー
まさにそう。いくら本で勉強しても、実際遺跡を歩いてみないと分からないことがたくさんあるんです。なにより“現場”が大事!
インタビュアー
その“現場”でセンセーショナルな発見をしたことはありますか?
角道 亮介先生
これは私が昔参加した発掘なのですが、殷の時代に「甲骨文字」というのがあります。漢字の祖型となった中国最古の文字なのですが、当時の人は亀の甲羅を使って占いをしていたんです。
角道 亮介先生
甲骨文字は基本的に殷の遺跡からしか出てこなかったのですが、その後の時代、周王朝の遺跡である周公廟遺跡の発掘に参加していたとき、隣の区画から大量に出てきて。日本ではあまり報道されませんでしたが、中国では報道陣がおしよせる一大ニュースになりました。
インタビュアー
それは大発見ですね!
角道 亮介先生
文明の出現にも関わることなので興奮しました。
インタビュアー
宮﨑さんは中国の発掘実習を経験されて何が印象深かったですか?
宮﨑 澪菜さん
10日間現、北京大学の学生と二人一組で発掘作業をして、言葉の壁はありましたが、身振り手振りでコミュニケーションをとって、時には議論しながら一緒に発掘して楽しかったです。
インタビュアー
何か見つかりましたか?
宮﨑 澪菜さん
私の区画からは出ませんでしたが、帰国した後に隣の区画から瓦が見つかったらしく、その子からチャットで連絡がきました。
角道 亮介先生
海外での発掘実習は、そうやって現地の学生と交流を深めることができるのも魅力なんです。

冒険心があれば
世界で通じる技術が身につく

インタビュアー
ゼミ生はどういった人が多いですか?
宮﨑 澪菜さん
みんな個性がバラバラですね。それぞれ違った地域の研究をしているので、そういった意味では自分が全然注目していなかった国の文化や遺跡について知れるのがおもしろいです。
インタビュアー
お二人はどうして角道ゼミを専攻されたのですか?
宮﨑 澪菜さん
2年生の終わりの1月に、それぞれの先生からどういった地域の研究をするのか説明会があるのですが、もともとエジプトに興味があったので角道先生のゼミに入りました。
常田 晃平さん
私はイタリアに興味があって、希望調査のアンケートを取ったときに一番近かったのが角道先生でした。
角道 亮介先生
二人のように、もともと考古学が好きな“考古ボーイ”“考古ガール”もいれば、“非考古ボーイ、ガール”もいて、後者で最初なんとなく入ったのに、おもしろさに目覚めてのめり込むパターンも少なくないです。私はそれが一番嬉しい。
インタビュアー
お話を聞いているとのめり込むのも分かります。
角道 亮介先生
考古学は、知識がなくても「見たことないものを見たい」「行ったことのない場所に行きたい」という好奇心と行動力があれば大丈夫。私もいまだに遺跡巡りが楽しくて、つい先日も海外の発掘実習でゼミ生の希望だったイランとメキシコを初めて訪れ、新しい知見を得ました。
インタビュアー
ゼミ生の希望も積極的に取り入れているのですね!では、お二人が思う角道ゼミの魅力は?
常田 晃平さん
自分たちの研究発表に対して、とても丁寧に、細かく指摘していただけるので、新しい視点が得られて世界が広がるのを実感してます。
宮﨑 澪菜さん
そう、「どうしてそうなるか」と深く掘り下げて聞いてくださって、正解ではなくヒントをいただけるので「考える力」が養えると思います。いつも先生と話すときは頭をフル回転させてます(笑)
角道 亮介先生
私の言うことだけを聞いていたら研究する意味はないですから。大学のゼミでの学びとは「自分で問題を見つけて、自分で考える」こと。なので、私の意見に反論して戦うくらいが理想だと思っています。それを目指しているので口うるさいんです(笑)
インタビュアー
その姿勢がゼミ生の成長をうながしているんですね。
インタビュアー
ところで、考古学の学びは卒業後の進路にどうコミットしますか?
角道 亮介先生
2つあって、まず、日本全国で埋蔵文化財の調査員、つまり自治体が行う発掘によって出土した遺物を保管し活用する仕事に就いているOBは多いです。
角道 亮介先生
もう1つは、グローバルに通用する考古学の技術が磨けること。言葉は通じなくても、発掘道具や観察方法、考え方は世界共通なので、日本でしっかり考古学を学べば、世界中どこでも通用します。それが我々の学問の特長であり強みでもあります。
インタビュアー
世界でも活躍できる礎が築けるのですね!では最後に、ズバリ考古学の魅力とは?
角道 亮介先生
一言でいうなら「ロマン」。それに尽きます!ロマンだけでは考古学はできませんが、ロマンがないところに考古学はない。少しでも好奇心や冒険心がある人は、ぜひその扉を開いて欲しいですね。

取材時期:2018年12月

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