長尾 譲治 先生
大阪府生まれ。平成5年駒澤大学大学院人文科学研究科社会学専攻修士課程修了。平成6年同博士後期課程中退。帯広大谷短期大学専任講師を経て、駒澤大学文学部社会学科社会福祉学専攻講師に就任。社会福祉士。過去に横浜ふくしネットワーク代表や社会福祉法人櫂理事などを務める。主な著書に『ライフサイクルと保健福祉』(春風社刊)、論文に「<園芸療法>の境界線-園芸療法の社会福祉モデルとコミュニティ- (共著)」(駒澤社会学研究)など。
佐川 冬香さん
文学部社会学科4年。長尾ゼミ所属。高校時代から福祉に興味を持ち、社会学科社会福祉学専攻に進学。医療ソーシャルワーカーを目指している。
座学に加えて
福祉をゲームで学ぶ楽しさとは
今日はゼミについていろいろお教えいただければと思います!先生のゼミは社会学科 社会福祉学専攻とのことですが、どういった内容なのですか?
よろしくお願いします。私のゼミでは「福祉の知識と技術を、日常生活や今後のライフイベントで生かすこと」をテーマにしています。
具体的にどういったことをするのですか?
福祉の知識は、例えば年金、医療などに関するものや、高齢者・障害者・児童に関するものなど、いろいろありますよね?それを座学でも学びますが、それだけだとおもしろくないので、ゼミのオリジナルの自作ゲームなどを用いながら、学生が自分のライフイベントにあてはめて、楽しみながら学べるようにしています。
どんなゲームなんですか?
ひとつは『福祉人生ゲーム』。人生ゲームは有名なボードゲームですが、福祉的な面から人生をたどるゲームを私自身が作成してゼミの授業で用いています。たとえば人が正社員として就職して給料を貰ったとき、いろいろ天引きされますよね。
社会保険料や税金とか。
そう。他にも仕事上で怪我があったら労災がおりたりとか、それも職業によって変わったり。そういった福祉や保険に関する人生の出来事をそれぞれのマスに用意しているんです。
それはおもしろそうですね!
本当におもしろいですよ!もちろん授業でも勉強していますし、先に就職した先輩からも聞いたりしますけど、それより具体的で身につきます。なにより皆でやっていて盛り上がります(笑)
他にはどういったものがありますか?
福祉の視点から自分自身の人生プランをたてる『福祉的ライフプランニングゲーム』などがあります。こちらは人生ゲームのマスをもっと細かくして、グループに分かれて、データをもとにそれぞれが「どういった人生を歩みたいか」を考えるゲームです。たとえば、社会人の男女が出会う場はどこが多いと思いますか?
職場とか……?
そう、日本では圧倒的に職場が多い。他にも結婚や出産の年齢など、さまざまなデータを見て、それを分析しながら、自分たちは将来どんな職業に就き、どこでパートナーと出会い、何歳で結婚して家を建てて……などをグループで考えながら進めます。
私はこのゲームを通じて、出産時の医療・福祉制度の詳細を知ったり、地域によって補助金が違うことを知りました。
そういった自分の将来をイメージしながら時間的、空間的に福祉をバーチャルに体験する、というのがこのゲームのコンセプトです。
とてもリアルですね!今からでもやりたいです(笑)
楽しいですよ。いま私は4年生でゼミを紹介する立場なんですけど、後輩に勧めまくっています(笑)
福祉の視点で「体感」することで人生が豊かに
佐川さんはどうしてこのゼミに入ったのですか?
もともと福祉に興味があって、将来そういう仕事に就きたくて。文学部はゼミが必修で3年生から所属するのですが、1、2年生のとき、熱心に指導される長尾先生に惹かれました。
ゼミ見学などには行かれたんですか?
はい。何回かオープンゼミに参加して、他にも個別で面談していただいてお互いに合っているかを決めるんです。専攻のみんなが長尾先生が好きで、どの代の先輩に聞いても「長尾ゼミはいい!」って言う人気ゼミなので、受かったときは嬉しかった!
そんな大層なものではないです(笑)ただ人数が多い場合は選考がありますね。
ゼミに入る前は専攻でどういった学びをするのでしょうか?
2年次には基礎演習があります。文献の調べ方から始まって、福祉の基本的な知識を身につけてもらったり、一つのテーマを決めてグループで調査して、それをプレゼンテーションしたりします。
佐川さんは、ゲームでの学び以外で印象に残っているゼミ活動はありますか?
福祉環境プログラムです。自分の身の周りの住環境を、福祉の視点で実際に調査しながら見直す活動です。
具体的には?
たとえばバリアフリーの視点で、校舎や教室の入り口の幅やドアの種類、スロープの傾斜角度などを測り、実際に車椅子に座って入りやすいか調査したり。
いまトイレに手すりがあったりユニバーサルデザインの施設も増えてきていますからね。
その幅が何センチだったら使い勝手がいいとか、距離が何メートルだったら動きやすいとか、実際はどうなのか体感するとすごく頭に入るんです。
最初はキャンパスで基本的な調査を体験してもらい、そのあと夏休みに各自の自宅を調査してもらっています。それをさらに応用して、家から駅までのバリアフリー状況を調べたり、街中にあるサインの有効性を調査したり。
それらを経験して、生活する上での“視点”が豊かになりました。
長尾先生は、とにかく「体感」「体験」を大事にしているんですね!
もちろん文字や数字で覚えることも大事なんですが、お堅い法律や制度はそのまま学ぶと退屈に感じるきらいがあるので、なるべく自身の生活にリンクさせて、なおかつ、楽しんで学んでもらえる工夫を取り入れています。毎年ゼミの学生に意見を聞きながら試行錯誤して、学生自身から提案してもらったプログラムを採用することもありますよ。
キャリア形成のサポートも充実
“優しさ”に包まれたゼミ
そういった福祉学習プログラムの他に、3年生後期から就職支援プログラムも始まって、それがすごくいいんです。
どういった内容ですか?
3年生の夏休みくらいから就活が始まるのですが、まず個別のキャリアカウンセリングをします。後期が始まったら、就職が決まっている先輩と後輩が集まって、昼食を共にしながら就職関係の話をする「キャリアカフェ」を開いたり。
OBやOG面談だと、アポイントを取ってきちんとスーツ着ていくなど、手間があるんですけど、キャリアカフェでは、たとえば3年生のこの時期はどういったことをしていたとか気軽に聞けるんです!
それはいいですね!
あと4年次には国家資格である社会福祉士の受験対策講座も開いています。
その資格は難しいのですか?
合格率は全国で約3割の難関です。でも、せっかくゼミに入ってきてくれた学生には合格してもらいたいので、夏休みは集中講座を開催し、後期に入ってから勉強会などを毎週開いたり、可能な限りサポートしています。
9月からの社会人マナー講座もすごくためになりました。
卒業後のキャリア形成サポートも充実しているんですね。ちなみに、ゼミ生はどういった人が多いですか?
男女比でいえば毎年女子が7、8割。やはり福祉に興味を持っている学生は性格が優しい学生が多いですね。
仲はいいですか?
すごくいいです。普段からゼミの後にみんなで食事に行ったりします。3年生のときに行った千葉の富浦のセミナーハウスでの合宿なんて、笑っていた記憶しかないです(笑)
お二人の人柄から楽しさが伝わってきます。では、どういった方がこのゼミに向いていると思いますか?
好奇心旺盛で真面目に学びたい、という人。でも、自分からぐいぐい行けない、という人でもグループワークが多いので、誰かがフォローしてくれたり、意欲があれば深い学びが得られると思います。なにより先生がなんでも受け止めてくれるから安心して発言できる。
福祉の知識だけでなく「自分自身が人生で何をやりたいか」を考えられる環境を意識していますね。
長尾ゼミは、優しさで包まれているんです!
取材時期:2018年9月