NOZOKIMI LAB

最新鋭の機器を使って学ぶ放射線治療技術

40年に渡ってがん治療と向き合い、放射線治療技術を研究している保科先生。穏やかでユーモラスな人柄は学内でも人気があります。今回は、そんな先生が胸に秘める熱い想いを教えていただきました!

保科 正夫 教授

身近な病気、がんと向き合う

インタビュアー
保科先生、今日は先生が駒大で取り組んでいらっしゃることについて、お話いただけたらと思っています。早速ですが、保科先生のご専門について教えてください。
保科正夫 教授
診療放射線技術です。
インタビュアー
私たちにとって身近な放射線の技術といえば、レントゲンがありますね。
保科正夫 教授
そうですね。でも、それだけではありません。特に、がん治療の分野において放射線技術は、とても重要な役割を担っています。
インタビュアー
ちなみにがんにかかる人は、どれくらいいるのでしょうか?
保科正夫 教授
日本人の2人に1人ががんになり、3人に1人ががんで亡くなると言われています。がんになる臓器や原因は様々ですが、年齢が高くなるほど罹患率も高くなります。毎年、約36万人の方々ががんで亡くなっているのですが、これは品川区の区民が毎年消失しているような状態なんです。
インタビュアー
えっ、そんなに多いんですか…。想像以上に身近な病気だったんですね。それだけ多くの方が亡くなられているということは、やはり治療が難しいのでしょうか?
保科正夫 教授
一昔前までは治らない病気だと思われていましたが、時代と共に医療の技術は進歩しているんですよ。がんの治療というと、かつてはがんになった臓器の切除が当たり前でしたが、放射線治療の進歩により温存療法が可能なケースも増えています。
インタビュアー
切除しなくても治療ができるというのはすごいですね!
保科正夫 教授
はい。ただし、日本は欧米と比べて放射線技術の専門スタッフが圧倒的に少なく、放射線技術の活用も遅れているというのが現状です。
インタビュアー
ところで、年齢が高くなるほどがんにかかる人が多くなるということは、高齢化が進むほどがんにかかる人も増えるということになりませんか?
保科正夫 教授
まさにそうなんです。未来に向けて、国内でも優れた放射線技術者の育成は必要不可欠です。そこで、「放射線治療人材教育センター」を大学の中に設立しました。

学生時代は失敗経験を積むことが重要

インタビュアー
ここは、具体的にはどんな施設なんですか?
保科正夫 教授
世界トップの医療機器メーカーである「バリアンメディカルシステムズ」と提携していて、施設内には製造した最新鋭の医療機器が並んでいます。最も高価なものだと10億円を超えるものもあります。
インタビュアー
そ、それはすごい! 駒大生は授業でそんな貴重なものを使うことができるんですか?
保科正夫 教授
はい。しかも、さらに技術が進めば、施設内の機器もアップグレードされるので、常に最先端の技術に触れることができます。こうした教育機関と医療機器メーカーとの提携は、国内では初の試みなんですよ。
インタビュアー
それだけの設備が整っているなら、ここで実際の治療もできるのでは?
保科正夫 教授
いえいえ、駒大はあくまでも教育機関なので、治療はできません。私がこの施設を作った本当の目的は、学生たちに失敗してもらうことなんです。
インタビュアー
失敗ですか?
保科正夫 教授
そうです。“失敗は成功の元”といわれますが、実際の医療現場ではミスは許されません。だから、この場で先にたくさん失敗して、その経験を蓄積しておく。実際に就職したときにこの失敗体験が必ず役に立ちます。
インタビュアー
確かに、失敗から学ぶことはたくさんありますね。
保科正夫 教授
学生だけでなく、実際に医療に従事している技術者の方々にもここを使ってもらいたいと思っているんです。技術が進化するなら、それに合わせて技術者も進歩していかなくてはいけませんよね。
インタビュアー
なるほど。医療職は、大学を卒業してからが本当のスタートなんですね。先生は教え子達には将来、どんな風になってもらいたいと思っていますか?
保科正夫 教授
年に1度、放射線治療に関する医師や技術者、医療機器メーカーなどが集まる学会が開催されるんですが、その場所で、さまざまな現場で活躍している生徒達と会えたら嬉しいですね。

生涯勉強!学ぶことを楽しんで

インタビュアー
最後に、読者の皆さんへメッセージをお願いします。
保科正夫 教授
私は大学を卒業後、東京医科歯科大学の附属病院に就職したのですが、その後、東京理科大に入学して理工学を学びました。当時の私は遊んでばかりいたのですが、今思えば、多くの学ぶ場所を与えられて、本当に恵まれていたなぁと思います。医療職は生涯、学び続けることばかりです。「放射線治療人材教育センター」ができたことで、今後、駒大には現役の技術者も来ますから、ぜひ色々な人から様々なことを学んでください。
インタビュアー
先生が学生の皆さんにおすすめしたい本はありますか?
保科正夫 教授
『ゾウの時間 ネズミの時間―サイズの生物学 』(著:本川達雄)は切り口が新鮮で、一気に読み終えた覚えがあります。あまり解説すると面白みがなくなってしまうので、これを読むと生物と数理がつながって楽しいよ、とだけ伝えておきます(笑)。勉強が苦手という人にもおすすめしたいですね。
インタビュアー
それはぜひ読まなくては!(笑)。保科先生、今日はありがとうございました!

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