先輩たちのその先のステージ

KOMAZAWA Next Stage

研究しやすい環境で、
望めば実践できる
大学院は自由なスタイルが魅力。

鈴木 崇司 さん
2020年3月卒業
文学部 歴史学科 考古学専攻 
→ 人文科学研究科 歴史学専攻 博士後期課程在学中/日本学術振興会 特別研究員DC2

考古学との出逢い

幼少期から歴史物のテレビ番組が好きで、特に考古学に興味を持っていました。さらに、生まれ故郷の静岡県三島市で文化庁が主催する「発掘された日本列島」展が開催されたことで、私の考古学への思いはより一層強くなっていきました。考古学への情熱は、高校進学後も冷めることなく、考古学の世界で生きていきたいという強い意思を持って考古学専攻のある大学を目指すこととなりました。夢は考古学者という漠然としたイメージでしたが、大学受験の時には、既に大学院への進学を視野に入れていました。

研究するうちに、興味は弥生時代に

高校では世界史を専攻していたので、駒澤大学に入学した当初はカンボジアなどの東南アジアやイギリスなどヨーロッパに興味がありました。しかし、先生方や先輩方のアドバイスを受け、日本考古学の勉強を進めるうちに、日本の歴史を研究するおもしろさに気づいていきました。そして、多岐にわたる研究テーマのなかでも、権力掌握や国家の形成過程に注目するようになり、階層構造が顕著になっていく弥生時代の研究に邁進していくこととなりました。
博士後期課程の今も、卒業論文から変わらず「弥生時代から古墳時代前期の鉄器」を中心に研究していますが、主たる研究地域を西日本から東日本に変更しました。鉄器のような先進文化は、弥生時代において中国や朝鮮半島からもたらされたと考えており、その地理的距離が離れる東日本は、後進地と評価され、西日本ほど分析が進められていなかったからです。その甲斐あってか、先行研究の解釈では理解できない分析データを導き出せることも少なくなく、その度に研究を進める意義を感じ取っています。

博物館での業務の傍ら、依頼をこなし
自分の調査研究も行う多忙な日々

修士課程2年の時から千葉県の松戸市立博物館の会計年度任用職員として、資料整理やその報告、展示準備などに携わらせていただいています。他にも科学研究費助成事業(科研)の依頼で発掘調査や資料検討会に参加したり、シンポジウム等での発表依頼が届くこともあります。私の研究テーマ以外の知識も求められるので、視野を広くし、幅広い知見を持つよう心がけています。時間が足りないと感じることもありますが、様々な時代・資料の研究を行うことが自分の研究に新たな活路を見出してくれることも少なくありません。より重厚で意義のある博士論文を執筆すべく、頂いた依頼は全部引き受けるよう努めています。
令和4年度からは日本学術振興会の特別研究員(※)に採用されました。研究者の登竜門である本制度に採用されたことは、ありがたく栄誉なことです。それに伴って、自分の研究にどういう意義があるのか、自分が辿り着いた結論が今ある社会問題にどう関わって来るのかを意識するようになりました。常に時事問題に目を光らせ、新しい情報をインプットして、自分の研究はその事象に対して何か役は果たせないかと考える毎日です。やりたいことをやりつつ、少しでも社会に還元できる研究をやらなければならないという意識はここ数年強くなってきています。

※日本学術振興会が行う、優れた若手研究者に対して、自由な発想のもと研究に専念する機会を与え、研究者の養成・確保を図る制度。

学部時代から現在に至るまで、日本全国の学会に参加したり、博物館や地方の自治体が持っている資料を見せていただくことで研究を進めてきました。また、駒澤大学以外の発掘調査にも参加し、その技術を学ぶこともありましたが、駒澤大学は、そのような研究のための自由な行動を許してくれる先生方が多く、私が他大学の先生や自治体の研究者にアプローチを取るのも必要があればご尽力くださいます。納得のいく論文を投稿し、科研や発表の依頼が届く日々を送れているのは、先生方のお力添えがあったからこそだと、今でも感じています。また、そのような方針で指導していただいたためか、海外での発掘調査に参加する機会も多く与えていただきました。技術的な成長はもちろん、日本とは異なる海外の文化に多く触れることで、研究者として、そして人として一回りも二回りも大きくなった気がします。
指導教員の寺前 直人先生は私に対して「糸の切れた凧」という表現をされましたが、自由に動き回りすぎるあまり、研究内容が行き過ぎたものになることもあります。それゆえ、自由に研究を進めることを承諾いただきながらも、地に足がついた研究に整えてくださる先生方の指導は、私に不可欠なものでした。駒澤大学で学び始めて早10年になりますが、この大学で指導を仰ぐことができたことに、心から感謝しています。

博物館に出勤するか地方で調査をしているかというスケジュールの毎日なので、他の院生よりも東京にいる時間は少ないかもしれませんが、基本的に自分の研究室にこもって研究を行っています。深沢キャンパスの機材を使って研究を進めたり、学部生の指導もしているので、朝から夜までずっと大学にいるような生活です。
大学院での学びは、先生から一方通行で教えられるよりも、こちらから先生に意見や疑問をぶつけることが増えました。研究者の道に足を踏み入れ始めているので、偉大なる研究者である先生方に積極的に立ち向かい、ただ講義を聞いて受け入れるだけでなく、自分が持つ知識や見てきた資料を頭の中でつなげていき、その話に矛盾がないかなど考えて講義をうけるようになりました。

駒澤大学ならではのメリットを活かし、
研究の世界に飛び込もう

大学入学の時点で研究者を目指そうという受験生は、分野を問わずたくさんいると思います。受験生からすると、偏差値の高い大学は確かに魅力的なのかもしれませんが、目指すべき道が自分にあるのなら、どの大学でも走り続ける事は可能です。
考古学を志す者にとって、駒澤大学は望めば実践できる環境にあります。考古学では学会全体が学部生を1年生から受け入れていますし、教員も積極的な学会参加を推奨した指導をしています。学会というと重々しそうに感じるかもしれませんが、その壁を越えていくことに、大学の学びの意義があると思います。専門性の高い知識を学ぶ楽しさと意義は並々ならぬものであり、皆様にもそれを感じ取っていただけたら幸いです。

駒沢キャンパスにある鈴木さんの研究室で。

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