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【先生の書斎拝見!】中国との架け橋は波乱万丈の道

日本語がペラペラでお話上手。学生たちから「ヤンヤン先生」と慕われる李妍焱先生に、学問の道に進んだきっかけなどを3つの思い出の品とともに語っていただきました。

李妍焱先生

中国吉林省出身。吉林大学外国語学部日本語学科を卒業後、東北大学大学院文学研究科人間科学専攻博士課程を修了。2002年より現職。日本と中国のNPOやNGO、社会起業家などのソーシャル・イノベーターをつなげる「日中市民社会ネットワーク」代表も務める。著書の『下から構築される中国―「中国的市民社会」のリアリティ』(明石書店)は第17回日本NPO学会賞 最優秀賞(林雄二郎賞)を受賞。

ひとりの先生と出会って、人生が変わった

小学5年生のとき、暮らしていた中国で大流行した日本のテレビドラマ「燃えろアタック」。そのテーマ曲を歌いたくて、中学1年から日本語を学び始めたというヤンヤン先生。中国・吉林大学でも日本語学科を専攻。そこで運命の出会いがありました。

言葉の力を教えてくれた恩師の1冊

「この本の著者、高野斗志美先生は私にとって人生の師。“魂レベル”で学問の世界へと私を導いてくださった方です」

高野先生は旭川大学学長を務めた方で、作家・三浦綾子の研究者としても知られる文芸評論家。学長を退任後、吉林大学に赴き、ヤンヤン先生が大学3年のときに文学の授業を担当。その授業はとても哲学的だったとか。

「文学作品を深く掘り下げて、そこに現れる主義・思想、価値観などに目を向けるものでした。そうした授業を受けていくうちに、これまで漠然と理解していたものが、先生の言葉によって、すとんと自分のなかに入っていく快感を覚えました」

まるで目の前の霧が晴れていくかのような快感――。これが学問なのではないか?そして学者とは霧を晴らす人ではないか?高野先生のように力のある言葉を発する人になりたい!ヤンヤン先生にとって、高野先生はまさにあこがれの人でした。

“問い”を立て自己を発見。学生たちの成果

高野先生から学んだことはもうひとつ。自分自身を発見することの大切さです。これは今、ヤンヤン先生が学生たちを指導するうえで土台になっていると言います。

「誰でも生まれながらにして“自分らしさ”があります。それにはいろんな側面があり、どれだけ自分の多面性を発見していけるか?そして多面性の中にある自分のコアな部分は何なのか?それを発見していくのが大学です」

それゆえ、ヤンヤン先生は講義、実習、演習とタイプの違う学びの場をつくり、学生たちがそれぞれ自分の側面を見いだせるようにしています。

「自分は何について知りたいんだろう?“問い”が大事であり、それはすべて自己発見につながります」

そうした授業の成果がこちらの写真。学生たちの魂がこもった報告書です。

卒業生の心を揺さぶる“贈る言葉”

そんなわけで、ヤンヤン先生のゼミでは濃い2年間を過ごすことになるようで、追い出しコンパは毎年大盛り上がり。この写真のように、趣向を凝らした思い出のアルバムが学生たちからヤンヤン先生に贈られるそうです。

「私からもお返しにカードを贈ります。一人ひとり、その人ならではのすばらしさを書き綴って。そうすると、それを読んで泣いちゃう子もいます。そう、魂にすとんと入る言葉の力です。高野先生から学んだことを、今、私が次の世代に与えている。しかも、私にとってそれは外国語。だからこそ、ここまで思う存分、言葉の力を発揮できる仕事に就けて幸せです!苦労して身につけた語学を次世代の育成に活かせるのは、”架け橋”の最高境地かもしれませんね。」

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