仏教学部
作法と心構えを究める「道」
インドでは出家者に食事を提供する風習があったので、僧侶は托鉢をして食を得ることが出来ます。それ以上に何か農作業などをすれば、出来た作物を守りたいという欲が出るので、仏教では生産活動を禁じていました。
しかし中国・日本では托鉢しても簡単には食が得られません。そこで禅宗は更に「清規(しんぎ)」という寺院ごとのルールをつくり、生産活動の際の心構えや作法を提示しました。そしてその心構えや作法を遵守することにより自分勝手な欲を抑え、労働を仏法として昇華する新しい価値観が生まれたのです。
この禅の文化は、日本では「○○道」という形で花開くことになります。例えば剣道や柔道は、単に試合の技術的な規則のみならず精神的な心構えをも視野に入れて鍛錬するでしょう。華道や茶道、書道なども、乱れた心では到底評価されないでしょう。
禅宗における清規が、労働を通して人格の形成をしようとする仏道を示すものとなるように、日本の○○道という文化は、この道の作法と心構えを極めた人であれば、同時に人格者であることが想定される、という一挙両得の文化なのです。
仏教学部: 晴山 俊英(曹洞宗学)