経営学部
目的に向かう「ONE TEAM」の強み
2019年の流行語大賞の年間大賞に、「ONE TEAM(ワンチーム)」が選ばれました。これは自国開催のワールドカップに出場したラグビー日本代表のチームスローガンで、チームはこの言葉のもとベスト8という目標に向かって個々のメンバーの努力を集結させました。チームワークの高さが観衆や視聴者の感動を生み、その声援も大きな力となって、史上初となる目標を達成したことは皆さんもご存じかと思います。
協力的で相互依存的な日本の文化の特徴を生かして成果を残したことは、近年グローバル化に伴い、過度に個人間の競争意識を植え付ける傾向にあった日本企業において、自国文化の良さを再発見することへとつながりました。実際、経営者がこの流行語を使ってメンバーを一体化させようとしたほどです。
ただし、今回の成功は、選手キャリアのなかで一度あるかどうかの経験であり、その過程で選手が自発的に私心を捨てて、生活にも犠牲を払って得た結果だったことを忘れてはなりません。
とくに日本では「ブラック企業」などと呼ばれ、給与以上にやりがいがあると意識させ、必要以上に働かせる「やりがい搾取」のようなケースも見受けられるからです。
経営学では、組織、集団の目的達成と個人の能力向上、自己実現の追求を両立させようとする考え方を多く学ぶことができます。「ONE TEAM」という言葉がどのような趣旨で使われているのか、自分で把握できる力を身につけることが大切なのではないでしょうか。
経営学部: 中川 淳平(経営学史)