仏教学部
温故知新。古典の智慧から学ぼう
情報過多の昨今、わたしたちは何かと物事に惑わされがちです。やってくる情報が少なければ、取捨選択する手間は少なくて済みます。ものごとの本質を見据えるには、まずは氾濫する情報のなかから、重要ではないものから切り捨ててゆく勇気が必要です。
お釈迦さんのご入滅の間際には、次のようなやり取りがありました。残される弟子たちは、お釈迦さんがいなくなってしまった後のことを憂いて、「師なきあと、わたしたちはいったいどうすればよいのですか。」と尋ねます。すると次のようなことを、弟子たちに仰いました。「自らを頼りとして、教えを頼りとしなさい」と。
お釈迦さん自身、師匠なしで、さとりを開きました。つまりここでは「まずは自分自身の感性を信じなさい。自分の内なる声に耳を傾けなさい」と言っています。さらに「仏教自体についてすらも、いちどは疑ってかかりなさい」とも言い含めていると考えてよいでしょう。そのうえで、「仏教の中から信じられるものを選りすぐって、頼りなさい」と言っています。
仏教では、これを「自灯明・法灯明」と呼びならわし、これこそが、お釈迦さんの基本姿勢と信じられています。情報過多の現在、われわれもまた、自分の直観と思考とをひとつの寄る辺として、そのうえで、先人の教えをもうひとつの寄る辺とする、このような姿勢から習うところがあるのではないでしょうか。
仏教学部: 加納 和雄