学問Q&A

人工知能が人間を支配しないか心配です。

法学部

「支配とは何か」を考えてみよう

心配している人工知能(AI)による支配とはどのような状態をいうのでしょうか。自動車を運転する人がカーナビの指示通りにルートを決定しているとしても、あるいはその指示通りに自動運転されるようになったとしても、ここで心配している意味では、カーナビに支配されていませんよね。

そこで支配の意味を、支配者が被支配者を意のままに操る状態を指すと理解してみましょう。このような意味の支配の概念は、法学でも被支配者の刑事責任の有無とか被支配会社の法人格否認といった場面で登場します。

カーナビで考えてみますと、そもそもカーナビに目的地を入力したのは人間です。そして具体的なルートについての指示を人間は受け入れていますし、その指示に逆らう選択肢も存在するので支配されているとはいえません。つまり支配する側の意思によって、支配される側の意思が抑圧されていなければ、支配を受けているとはいえないのです。

それではAIは、いずれ自ら意思を持ち、人間の意思を抑圧するようになるでしょうか。近い将来、人間はその判断の多くをAIに委ねるでしょう。カーナビは“生活ナビ”や“政策ナビ”にと役割を拡大するかもしれません。それでも、そのAIに目的地を設定したのが人間であれば、AIが意思を持って支配しているとはいえないでしょう。心配すべきは、人間が本当に正しい目的地を設定できるかどうかではないでしょうか。

法学部: 篠原 信貴(労働法)

おすすめ参考文献

法律学習マニュアル〔第4版〕
弥永 真生(著)有斐閣(刊)

法律を学ぶ上で必要な文献検索の方法から教科書の読み方までを、具体的、実践的に網羅。法学部で学ぶその前に。

AI時代の働き方と法――2035年の労働法を考える
大内 伸哉(著)弘文堂(刊)

人工知能やそのほかの技術革新によって労働や生活と制度や慣習がどう変わっていくか論じています。未来の労働法を覗き見ることができるかも。

top