文学部
機械を支配するのは、人間です。
人工知能(AI)が普及し始め、その影響が議論されています。私が研究している産業・労働の社会学においても、同様です。例えば、AIの普及によって、これまで人間が行ってきた仕事がAIにとって代わられてしまい、なくなってしまうのではないか、つまり、仕事がなくなる人が増えるのでないかという推測が行われたりもしています。しかし、AIが普及すると、それによって生み出される仕事も増えるはずです。
AIは、コンピューターの部品に過ぎず、それを大きなシステムに応用する際に重要になるものは、人間のアイデアですし、日常生活において、AIを利用した製品を開発、生産、あるいは販売する担い手も人間でしょう。結局はAIがどんなに賢くなっても人間によって支配されているというわけです。そもそも、人間の仕事がなくなることは、賃金をもらう労働者がいなくなり、その結果賃金を使って消費する消費者もいなくなることを意味しており、現在の資本主義のシステムが成り立たなくなることにもなります。
AIについては、将来の不安をかきたてる議論が横行しています。しかし、横行している議論を批判的に判断できる力を身に着けることも必要です。大学とは、まさにそうした場であるはずです。
文学部: 山田 信行(労使関係論)