文学部
「地球環境」と「幸せ」が問われ始めた時代
私は地理学のなかの気候学を専門とし、屋久島やブータンヒマラヤをフィールドとして研究をしています。まさに平成の始まるころに地球温暖化問題が注目されるようになり、気候や気象の分野はこの問題とともに平成を歩んできました。平成5年(1993年)には屋久島が世界自然遺産に認定され、多くの人々が訪れるようになり、島を取り巻く環境も大きく変わりました。
一方、平成になって注目を浴びた言葉に「GNH(国民総幸福度)」があります。GNHはもともとブータンの第4代国王が1970年代に行った演説にその源があります。1990年代以降国際社会が大きく変動するなかで、国民の幸せと経済活動の調和を取って国の発展を目指すというGNHの思想が注目を浴びるようになりました。ブータンではここ20年の間に憲法の制定、国王から選挙で選ばれた内閣への行政権の委譲など急速な民主化が図られ、社会が大きく変容してきました。まさにブータン自身がGNHの実験場になっているように思います。
このように平成に始まった環境や社会の変化は現在継続中で、今後どのようになるか興味深いとともに、それらにどのように対応するかは人類にとっての大きな課題であると思います。
文学部: 江口 卓(地理学)