グローバル・メディア・スタディーズ学部
家族の生活に責任を持つこと
「三十すぎてもおそくはねえぞ 一人ふえれば倍になる」。これは、日本が貧しかった頃のとある寒村を舞台にした小説『楢山節考』に登場する村の歌ですが、どのような意味でしょうか。
まず結婚することで家族が1人増えます。子どもが産まれて無事に育てば、すぐに食べ盛りの年頃になり、食料の消費が倍になるほど増えてしまいます。一方、一家に働き手が増えたからといって、畑からの収穫量は簡単には増えません。こうして、ぎりぎりの水準で暮らしていた一家の食料は不足します。場合によっては、村での収穫物の奪い合いや食料の盗難を引き起こすこともあります。つまり、結婚が遅くなればそれだけ食料の消費が少なくて済むので、この貧しい村では歌にして晩婚を奨めているのです。
小説では、息子の再婚と孫の早婚によって急に家族が増えたため、冬が越せるかどうか老母と息子は不安でなりませんでした。村の習わしを守り、息子は老母を背負い雪山を登ります……。
ここでは小説を例にしましたが、現実でも結婚によって家族の生活に責任を持つようになります。それこそ、異性に対する恋と、家族に注ぐ愛情との違いなのです。
グローバル・メディア・スタディーズ学部: 星野 真(開発経済学・中国経済)