親密な関係の「社会的承認」
結婚するには「婚姻届を出すこと」が「あたりまえ」だと思う方は多いと思います。「婚姻届を出すこと」は、国に結婚を承認してもらい、法的な保障を得るという手続きです。
しかし、社会学では、婚姻届を出していなくても当人同士や周囲の人たちが「結婚している」と認識していれば、「結婚」とみなします。ここでいう「結婚」とは、そのカップルに「排他的な(=二人だけに限る)」「親密な関係(=性関係)」が継続していることで、この関係を「周囲の人たちも認めている(=社会的承認)」状態のことです。
婚姻届を出していない結婚を「事実婚」といいますが、欧米では、近年「事実婚」を選択するカップルも多く見られます。日本では「事実婚」は婚姻届を出す「法律婚」より不利益があるため、「事実婚」を選択するカップルは極僅かです。しかし、欧米では、LGBTカップルも含めた多様な婚姻形態を平等に保障しようとする動きから、「事実婚」も「法律婚」と同じ社会的な保障を得られる制度が作られています。
こうした「結婚」の見方は、「社会関係に着目する」という社会学の特徴と、「日常生活のあたりまえを疑う」という社会学の視点によるものといえます。
文学部: 松信 ひろみ(社会学科社会学専攻、家族社会学・ジェンダー論)