学問Q&A

10代のうちにやっておくべきことはなんですか?

仏教学部

失敗を恐れず旅に出よ

禅宗では修行僧のことを「雲水」と呼んでいます。雲水とは行雲流水、すなわち流れゆく雲や水のように、同じところに留まらず諸方を巡り歩く修行僧の姿を指して言ったものですが、禅僧の自由自在な境涯を形容する言葉でもあります。

昔の禅僧は修行の過程のなかで、大きな疑問に対する答えを探し求めてさまざまな師のもとに参じました。多様な経験を経たうえで、よき師に巡り合い、なんらかの指針をもらって、さとりに向かってさらに歩みを進めていくのです。そのなかでは失敗も多々あったことでしょう。しかしそれは失敗とは言えません。それはさとりを得るために必要な経験と捉えることができます。

「失敗を恐れず旅に出ること」と回答したいところですが、10代のうちでは諸条件によって雲水のように各地を巡るのは難しいでしょう。それではどうするべきでしょうか。

私はいろいろな本を読むことをおすすめします。本を読むことは他人の思いや経験、知識などを実体験のように共有できる方法のひとつです。ある特定の考えに凝り固まらず、さまざまな考え方があることを理解して、柔軟な発想ができるように訓練をしていくこと、これが若い10代のうちに行っておくべきことだと思います。

仏教学部: 大澤 邦由(中国禅)

おすすめ参考文献

中陰の花
玄侑宗久(著)文春文庫(刊)

現役の禅僧である作者が、仏教や禅の本来の考え方と世俗的宗教観との間のずれに悩む主人公の葛藤を描いた小説です。宗教とはなにかを考えるきっかけとなるでしょう。

蒼穹の昴
浅田次郎(著)講談社(刊)

私が中国に関する研究を志すきっかけとなった小説です。清朝滅亡の際、異なる立場の人々それぞれの思いを描いています。中国の歴史に対するロマンがかき立てられます。

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