学問Q&A

大学4年間で、どのようなことが身につきますか?

法学部

社会人としての問題対応能力を養う

社会を形成し動かしているのは、私たちみんなで作った法律やお互い同士で結んだ約束(契約)などの社会的ルールです。こうしたルールの、いわば「操作方法」について各々の分野に即して学ぶのが法学部の、とくに法律学科での勉強の一つの柱ですが、しかしそれは「法律に何が書いてあるかを覚えること」ではありません(法学部ではたいていの場合、法律条文を見ながら授業や試験を受けられます)。だいたい世の中はルール通りに行かないことが多いのです。ルールがあるけれども破られることはよくあります。ルールが現実に合わないこともあれば、あるべきルールがないこともあるし、場合によっては正式なルールよりもっと便利なルールが自然にできてしまうこともある。つまりルールがあっても、トラブルや争い、とまどいは必ず社会の中に生じるのです。そうした問題が起ったときにどうするか、問題があまりひどくならないようにどんな手立てがあるか──こういう「トラブルシューティング」を考えていくのも法学部での勉強のもうひとつの、もっと大きな柱です。

「どんな人でもいろいろ自分の問題を抱えながら生きている」のが現実の社会であり、みなさんも入学後の4年間の大学生活の後に社会人として自立していくことになるわけですが、法学部で真剣に学修するならば、卒業後の進路(職業)として、自分はどんな種類の問題となら取り組んでいけそうかなということが自覚できてくるでしょう。そして自分の選んだ職業生活のなかで自立しながらも協力しあって生きていくための知的基礎体力を身につけることができるでしょう。

法学部: 高橋 洋城(法哲学)

おすすめ参考文献

自由はどこまで可能か──リバタリアニズム入門
森村 進(著)講談社(刊)

リバタリアニズムは自由至上主義などとも訳され、今日の法・政治哲学の分野で影響力を持っている考え方です。これは個人の自由を妨げるものを徹底的に排除することを目指す思想であり、中には、個人の自由を侵害する国や政府そのものを廃止すべきだと主張する人もいます。警察は民営化して警備会社にしてしまえばよいのでは? 裁判所も会社化して自由競争すればいいし、学校も義務教育などやめて行きたい人だけが行けばよい──しかしそのような社会が実際にうまく回っていくでしょうか? 本書の著者はこのような、国家の廃止まで唱える極端な立場に立ってはいませんが、リバタリアニズムの主張を真剣に受けとめることによって、国家というものが果たして何をしているのかを根本から考えることができます。

うるさい日本の私
中島 義道(著)KADOKAWA/角川書店(刊)

「親切」や「優しさ」とか「思いやり」とか、なんとなく良さそうな、誰もが否定しそうにない言葉が、実は気づかないうちに苦しみを私たちにもたらしているのではないでしょうか。それに気づかないのは私たちの責任ではないでしょうか。いつも発する言葉や態度のあり方について真剣に考えることは、「なんとなく」生きている私たちのあいだに、困惑や波風や対立をもたらす行為でもあるということを改めて自覚させられます。「なんとなく」を問い直す勇気を持つために、法や政治、社会を学ぼうとする人に読んでもらいたいと思います。

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