社会人としての問題対応能力を養う
社会を形成し動かしているのは、私たちみんなで作った法律やお互い同士で結んだ約束(契約)などの社会的ルールです。こうしたルールの、いわば「操作方法」について各々の分野に即して学ぶのが法学部の、とくに法律学科での勉強の一つの柱ですが、しかしそれは「法律に何が書いてあるかを覚えること」ではありません(法学部ではたいていの場合、法律条文を見ながら授業や試験を受けられます)。だいたい世の中はルール通りに行かないことが多いのです。ルールがあるけれども破られることはよくあります。ルールが現実に合わないこともあれば、あるべきルールがないこともあるし、場合によっては正式なルールよりもっと便利なルールが自然にできてしまうこともある。つまりルールがあっても、トラブルや争い、とまどいは必ず社会の中に生じるのです。そうした問題が起ったときにどうするか、問題があまりひどくならないようにどんな手立てがあるか──こういう「トラブルシューティング」を考えていくのも法学部での勉強のもうひとつの、もっと大きな柱です。
「どんな人でもいろいろ自分の問題を抱えながら生きている」のが現実の社会であり、みなさんも入学後の4年間の大学生活の後に社会人として自立していくことになるわけですが、法学部で真剣に学修するならば、卒業後の進路(職業)として、自分はどんな種類の問題となら取り組んでいけそうかなということが自覚できてくるでしょう。そして自分の選んだ職業生活のなかで自立しながらも協力しあって生きていくための知的基礎体力を身につけることができるでしょう。
法学部: 高橋 洋城(法哲学)