学問Q&A

英語力って本当に必要ですか?

文学部

必要です。生死にかかわるかも

イギリス文学の作家ジョウゼフ・コンラッド(1857年-1924年)に、「エイミー・フォースター」という短編があります。エイミーはイギリス人、夫ヤンコウはポーランド人。ある時ヤンコウが高熱を出し、謎の言葉を必死で叫びます。エイミーは、怖くなって逃げ出しました。その言葉とは・・・ポーランド語で「水」でした。お水が飲みたかっただけなんです。英語で言えばよかったのに、体がつらくて、つい母語になったんでしょう。ヤンコウはその後、家の外にはい出し、水たまりにうつぶせになって、息絶えていました。

実は、この話を書いたコンラッドは、もともとポーランド人なんです。船乗りになり、20歳を過ぎてから英語を身につけ、イギリス国籍を取って、英語で小説を書きました。つまり、英語を話さず失敗したヤンコウは、英語を使って成功したコンラッドの「ありえたかもしれない自分」なんです。コンラッドは、世界中で高く評価されてますが、一つには英語を使う人口が多く、英語で本を売る市場が大きいからでしょうね。ポーランド語で書いていたら、どうだったでしょうか。ということで質問の答えは、「必要。キャリアには絶対かかわるし、生死にもかかわるかも」です。

文学部: 川崎 明子(英米文学科、英文学と文化)

おすすめ参考文献

日本語が亡びるとき 英語の世紀の中で
水村 美苗(著)筑摩書房(刊)

12歳で渡米し、バイリンガルでありながら、英語ではなく日本語で小説を書くことを選んだ著者による、日本語と英語で書くことについての貴重な考察です。

嵐が丘
エミリー・ブロンテ(著)鴻巣 友季子(翻訳)新潮社(刊)

イギリス文学の傑作。ヒースクリフとキャシーの大恋愛が有名ですが、読めば読むほど、二人の関係は謎に。みなさんも謎解きしてみてくださいね。翻訳は新潮文庫がおすすめ。

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