学問Q&A

東京オリンピック開催で、社会や生活はどのように変わりますか?

文学部

整備されるインフラの行方に注目

高度経済成長期の1964年に行われた東京オリンピック・パラリンピック(五輪)では、新幹線や首都高速道路、東京モノレールなどが整備され、代々木や駒沢には競技施設が建設されました。隣の駒沢オリンピック公園はそのときに整備されたものです。このように、五輪を機にインフラの整備が進みました。さて、2020年の東京五輪では、どこがどう変わるのでしょうか。神宮外苑の国立競技場は新競技場として生まれ変わり、晴海や有明の埋立て地には選手村や競技施設も建設されます。東京都心とこれら五輪関連施設を結ぶ道路(環状2号線)も整備予定ですが、築地市場の豊洲への移転が大幅に遅れため、こちらは計画どおりには進まない可能性があります。そのため、予定されていた新バス交通システム(BRT)の導入も不透明になっています。また、選手村は、五輪後には巨大マンション群として再開発予定で、既にそれを見越した不動産バブルも起こっています。東京では既にマンションが供給過剰と言われていますので、郊外でますます空き家が増えるかも知れません。さらに、競技施設の多くが臨海部にあるとはいえ、高温多湿の真夏の東京で行われる大会は、選手、関係者、観客だけでなく東京都にとっても酷な五輪となりそうです。大会後、整備されたインフラが真のレガシーとなり得るのか、地理学的視点で注目したいですね。

文学部: 人文地理学分野教員

おすすめ参考文献

新東京風景論ー箱化する都市,衰退する街ー
三浦 展(著)NHK出版(刊)

本書は東京五輪と直接関係しないが、莫大な建設費が問題となった新国立競技場のザハ案は、なぜ神宮外苑に相応しくなかったのか、などの問いかけから都市景観のありかたを考える一冊。

老いる家 崩れる街
野澤 千絵(著)講談社(刊)

本書も東京五輪と直接関係はないが、空き家の増加が社会問題となっている日本で、相変わらず市街地にはマンションが建設され続け、郊外では戸建住宅開発が進むという都市計画の矛盾を指摘した一冊。

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