好奇心よりも使命感
私が研究を開始した90年代前半は、バブル崩壊による不況で日本の経済は厳しい状況にありました。グローバル化やIT化の進展もあり、特に地方においては「産業の空洞化」問題による地域経済の衰退が深刻でした。この状況を改善するために、政府は欧米に学んで施策を講じたのですが、一向に政策効果が見られませんでした。日本と欧米の国民的制度には違いがあるので、欧米の経済政策を輸入しただけでは特効薬とならなかったのです。歴史・文化・自然・産業などの異なる地域(市町村単位)の場合、そもそも国が用意した画一的な施策による政策効果には限界もありました。
私は「好奇心」という感情のおもむくままに研究を進めている訳ではありません。地域という現場に行くと、そこには必ず志のある人(志民)がいて、地元を良くしようと奮闘している姿が見られます。私は、こうした人達から学び、研究によって恩返しする、といった「使命感」をいつも持っています。経済学とは、世を経(おさ)め、民を済(すく)う「経世済民」の学と言われています。私の専攻する「地域経済学」においても地域の人達に幸福をもたらす学問であると信じ、私は好奇心というよりも使命感を持って実践的に研究をしています。
経済学部: 長山 宗広(地域経済論)