学問Q&A

マスク越しでも心を掴むにはどうしたらいいですか?

文学部

関係性に目を向けてみよう。

ただでさえ相手の心を掴むのは難しいことなのに、マスクをつけた状態ではさらに難しいでしょう。目だけで相手の心を読む力や話術に自信がある人なら、マスク越しこそ心を掴みやすいと感じるかもしれません。それでもやはり、相手の心を掴むのは難しいことに変わりありません。

「あの人のことが好きだから」とか、「誰かをうまく利用したいから」、「世の中をよくしたいから」など、いろいろな理由で人は人の心を掴みたいと思うものです。こうした人と人とのかかわりについて、社会学では人の意図や行為、相手との関係性や暗黙のルールといったものに注目します。あるいは、もう少し大きな枠組みで捉えようとするなら、時代背景や世相といったものに注目することもあります。

それでも、「こうすれば相手の心を掴めます!」と豪語する社会学の研究に私は出会ったことがありません。もちろんこれは私が勉強不足なだけかもしれませんが、そうした研究が見当たらないのは、社会学が相手の心を掴むことよりも相手と関係を結ぶことのほうに注目してきたからではないかと思います。

これまで社会学の研究として調査先の人たちからお話を聞かせていただく機会に恵まれてきました。その際に、私が心を掴まれるということは何度もありました。それは、相手が真摯に私と向き合ってお話をしてくれたからだと思います。社会を知り分析する手法として行われる調査もまた、相手とどのように関係を結ぶかが鍵になります。

文学部: 土田久美子

おすすめ参考文献

『フィールドワークの技法――問いを育てる、仮説を鍛える』
佐藤郁哉(著) 新曜社(刊)

調査の際の心構えについて教えてくれる代表的な研究のひとつです。出版されてから20年が経とうとしていますが、調査に興味のある学生に今でもおすすめしています。心の掴み方についてはよく分かりませんが、心の通わせ方であれば、この本から学べるものがあると思います。

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